私の履歴書 NY編 ビジネスインテリジェンス協会事始め
2023年8月6日 中川十郎
(3)米国競争情報専門家協会のご縁
1989年10月NYでの米国競争情報専門家協会(SCIP)会議で日本総合商社の情報収集、活用について発表したことは前回報告した。ご縁とは誠に不思議なものだ。その際、同じく
講師として参加していた米ラトガース大学経営大学院准教授・ベンジャミン・ギラード博士より同氏の情報研究著作、”The Business Intelligence System”の日本語への翻訳を依頼された。Herbert E.Meyer氏の”Real World Intelligence”の翻訳中であったので、翻訳には時間がかかるがそれでも良いかと打診したところ、時間はかかっても良い。強く日本での翻訳出版を希望するとのことだった。筆者一人での翻訳ではさらに時間がかかることを危惧し、情報研究に熱心な友人の元伊藤忠、日揮、日本鋼管に勤務。ハーバード大ビジネススクールに留学経験もある尾本泰造氏(BIS顧問)と、NYで懇意にしていたNTT理事・NTTラーニングシステム常務で米ビスコンシン大学経営大学院MBAの香取一昭氏(BIS副会長)と筆者の3人で共訳することにした。出版はBIS理事のエルコ出版社・横山秀男社長が引き受けてくれた。だが、元イスラエル警察インテリジェンス部門責任者のギラード博士の英語はなかなか難解で、翻訳完了に時間がかかり、『グローバル企業の情報組織戦略』出版は1996年11月にずれ込んだ。日本に於けるビジネスインテリジェンス関連翻訳ではHE.マイヤー氏の『CIA流戦略情報読本』(ダイヤモンド社 1990年)に続く2冊目の翻訳出版となった。3冊目の翻訳出版『成功企業のIT戦略』米コロンビア大学教授、ウイリアム・ラップ著はBIS顧問の柳沢 亨、長島敏雄氏、筆者の共訳で日経BP社から2003年12月に出版された。
上記NY会議でのご縁による筆者の英文出版はSCIP(米国競争情報専門家協会)の要請で執筆した“Global Perspectives on Competitive Intelligence”(1993年、Alexandria、USA) に欧米の情報研究者と共著で執筆した”Intelligence in Japan”,さらに筆者の情報研究恩師のスエーデン・ルンド大学Stevan Dejier博士の生誕80周年記念論文集 “The Intelligent Corporation“ Taylor Graham, London, 1991に寄稿した”Intelligence,Trade and Industry”、BIS創設20周年記念にBIS顧問・青山学院大学石川 昭 名誉教授と共編著で2013年にシンガポールのWorld Scientific から出版した“An Introduction to Knowledge Information Strategy~from Business Intelligence to Knowledge Science (日本語での出版は税務経理協会から『知識情報戦略』として2008年に出版)などがある。この本はいまだに外国情報研究者が購入しており、半年に1回の著作料がシンガポールから送金あるほど外国の情報研究者から注目されていることはうれしい限りである。だが、BISが長年情報研究でご指導を頂いた共編者の石川 昭 名誉教授は先年逝去され、国際的な情報研究の先達を失ったことはフランス情報関連でお世話になった橋田久仁雄BIS顧問のご逝去と合わせ、BISにとり大きな損失で誠に残念である。謹んで深甚の感謝とご冥福を祈る次第である。