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        2024年4月29日 

        話のタネ

        閉塞感

                元国連事務次長・赤坂清隆

         

        前略、

        もう夏のような陽気のもと、ゴールデンウイークが始まり、旅行へ、居酒屋へと日本は平和でいいですね。

        ただ、目を世界に転じると、ウクライナ戦争、イスラエルとハマスの戦争など、先の見えない混沌とした国際情勢が続いています。ロシアにプーチン、中国に習近平、北朝鮮に金正恩など、権威主義国のリーダーが、まるで世界の時計がストップしたかのように、いつまでも権力の座に居座っています。そこに、トランプ前米大統領がまた返り咲きかねないというのですから、世界は前に進むどころか、泥沼にはまり込んで動けないような状態ですね。現在の国際情勢を覆う共通の感情は、出口の見えない「閉塞感」といってもいいのではないかと思われます。

        そこで、このような世界の中でわたしたちはどう生きたらよいのかという難しいテーマで、先日新潟で講演をしてまいりました。食の新潟国際賞財団のご親切なお招きを受けて、「激動する世界情勢と食料問題」と題する講演会で、わたしと国連世界食糧計画(WFP)の津村康博日本事務所代表のそれぞれの講演でした。その際使いましたわたしのパワーポイントを、ご参考までにお送りいたします。皆さんの講義や講演でお役に立てるスライドが含まれていましたら、どうぞご自由にお使いください。

        皆さんに少しご注目いただきたい点だけを取りあげますと、以下の通りです。

        (1)世界は、自由主義圏と権威主義国圏に分断されているわけですが、その間を右往左往する、いわゆるグローバルサウスの国々の存在感が増大しています。そして、驚くべきことに、最近の世論調査では、ロシアに好感を持つ新興・途上国が増加しており(スライド4)、また、ASEAN10か国中、米中なら「中国を選ぶべき」とする人々が過半数を占めたということです(スライド5)。

         

        (2)トランプがもし再選されたら、という「もしトラ」の場合に起きうるシナリオについては、佐々江賢一郎元駐米大使の日本記者クラブでの発言要旨をまとめました(スライド8)。英国のファイナンシャル・タイムズ紙のコメントは明快です。トランプには、「カネの亡者」として対応するのが良いとすすめています。「金で動く人物なのだ。それも法外な金額でなくてもいい」と言い切っています(スライド9)。

         

        (3)中国の経済力が米国を追い抜くのかどうかについては、これまで諸説が飛び交ってきました。以前、2030年ごろには中国のGDPは米国を追い抜くと見られていましたが、2022年12月に日本経済研究センターが米国越えは困難となったと発表して、「なんだ、米国が世界一を続けるのか」と思わせました。ところが、2023年12月には、英国のシンクタンクが、2037年には米中のGDPが逆転するとの予測を発表して、「やはりそうか」という状況です(スライド11,12)。この予測で注目されるのは、2038年には、中、米、インドに続いて、日本が4位に残っていることです。現在の日本の経済力は、米、中、ドイツに続く4位で、もうすぐインドに抜かれると巷では予測されているのですが、どっこい、ドイツは再び日本の後を追うことになるとのことです。それでも、現在のような円安が続けば、このような予測もどうなることやら。

         

        (4)これからは、データとAI(人工知能)の世紀になることは間違いがないと思います。すでに企業へのAIの導入が日米とも急速に進んでいます(スライド14~17)。

         

        (5)ウクライナ戦争の日本への教訓は、真剣に考えなければなりません。専門家が「想定外だった」ということが多すぎます。この戦争はいつまで続くのでしょうか?そして、どのような終わり方をするのでしょうか?「ウクライナは明日の東アジア」という岸田首相の見方は正しいのでしょうが、さて、それでは、具体的にどうするというのでしょうか?戦争が拡大して、ひょっとして第三次世界大戦が始まる恐れはないのでしょうか?(スライド21~29)

         

        (6)「日本を敵国が攻撃し、自分の身近な人(家族・友人・知人)に危害が及ぶ可能性があるときに、あなたは戦闘員として戦う用意がありますか?」という問いに対して、日本の18歳前後の若者のたかだか13%しか肯定的な回答をしていません。ベトナムの96%、中国の89%、エジプトの84%といった数字に比べて、なんと低い数字でしょう!(スライド30,31) この数字には、新潟の聴衆の方々もひどく驚かれたようで、「どうしたらよいのでしょうか?」とのコメントも頂戴しました。どうしたらよいのでしょうね?

         

        (7)日本が世界のために出来ることはたくさんありますし、またそうすることを期待されていると言えます。他の民主主義国との「格子状の」連携、国連安保理の改革、平和と発展のためのイニシアチブ、紛争解決のためのファシリテーター役などいっぱい考えられますが、やはり政治的なリーダーシップが必要ですね(スライド38~42)。

         

        (8)わたしたちは、このような世界の中でどう生きるのが良いのでしょうか? コロナ禍の教訓は、まず第一に、「人生は精一杯生きるもの、貯めておくものではない」ということではないでしょうか?貯めておいたら、やってくるのは突然の人生の終焉かもしれません(スライド43)。日本の若者の多くは、もはや、野心家ではなくなっているようです。金持になることや、出世、世界での活躍をめざさなくなっています。代わって、両親、家族、友人との睦ましい関係が高い優先度を占めています(スライド44)。

         

        (9)令和4年版高齢社会白書によると、日本の高齢者の7割以上は、人生の生きがい(喜びや楽しみ)を、十分かあるいは多少感じているようです。生きがいを感じる割合が高い高齢者は次のような人とのことです。皆さんにも参考になるでしょうか?(スライド46、47):

        • 趣味をともにする、お茶や食事を一緒にするなど近所の人との付き合いをしている人
        • 親しくしている友人・仲間を、より多く持っている人
        • ふだん外出する頻度がより多い人
        • パソコンの電子メールによる家族等との連絡や、インターネットによるショッピング、SNSの利用などをしている人
        • 収入の伴う仕事をしたり、社会活動に参加したりしている人

         

        (10)世界で起きている問題の解決のために、わたしたち個人ができることには限界があります。それでも、国際情勢をフォローし、情報を集め、意見を投書やメールで広く伝え、議論し、選挙の投票に出かけ、ボランティア活動に参加するなど、少しはできることがありそうです。人生の生きがいを高めるためにも、前向きに頑張りましょう。世界三大幸福論の一つ、フランスのアランの幸福論の一節に、「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」という言葉がありますね。そうです、意志を強くすれば目の前を明るくすることができると信じて、この「閉塞感」の漂う世の中を少しでも楽観的に見ることにしたいですね。(了)

         

        制作協力企業

        • ACデザイン
        • 日本クラシックソムリエ協会
        • グランソールインターナショナル
        • 草隆社
        •                 AOILO株式会社

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